近寄ってそろーっと起こさないように気を遣いながら上から覗いてみる。







「ッッ!!?」







な、に……この人。







すごく。







綺麗……。







睫毛長い……。







多分、男の人。






綺麗だなぁ。







ボーッとしばらく寝顔を見つめていた。







数分して。






「…ん………やっべ!寝てた!」







「っわぁ!!」






いきなり起き上がったものだから、びっくりして後ろにひっくり返った。







「ん?あれ?お前そんなとこでなにしてんの?」






「い、いや、あたあたしは!とと友達とはぐれてしまって!そそれで………」








「まぁ、いいけど。何年生?」







「あ、えと。1年です」







「おっ!マジか!?クラス確認してきたよな?どこだった?」







「え?……あ、2組です」







「おおっ!!2組かぁ。………んで、名前は?」







「……………」







何だろうこの人……すごく、質問が多い。






さっきまで寝てたとは思えないほどのテンションだ。







「七瀬 すず…です」







「…へぇ、七瀬な七瀬。よろしく!」







「は、はぁ」







「そうかそうか七瀬 すずって言うのか……ちょっと古風だな」







「……あの、あなたは?」







「ん?俺?……俺は…………」







あたしたちの間を風が吹き抜ける。







なぜだか燃えるような力強い瞳があたしを捉えた。







その瞳で見つめられた時、ドクンと大きく一度、心臓が鳴った。







「俺の名前は………内緒!」







「……はぇ?」







「つっても、すぐ会うからバレるけどな」







「……どういう……」







「じゃあ、ここから入って上に上がればちょうど2組の教室だから、じゃあな、七瀬」







そう言い残し、彼はフラーット手を挙げ去って行ってしまった。







その気怠げな後ろ姿を見つめる。







あたしはこの時すでに、どうしようもないほどの、取り返しのつかないほどの、感情が芽生えたんだって、今ならわかる。