「桐山さん」

由紀先輩の声が私の名前を呼ぶ。


「ちょこっと抜け出そうか」

「え?」

「小沢ー(おざわ)俺の楽器と桐山さんの楽器、教室にもっていとてよ」

「ん?あぁ、いいけど」

「あの、小沢先輩!楽器お願いします!」

「りょーかーい」


由紀先輩に腕を引っ張られ、出しかけの楽器をパートの先輩に頼み、私はひこずられるように音楽室を後にした。