ちなみに私ももう2年生、つまりは先輩。

もちろん私が指導している後輩もいる。

その後輩とやらは…


「七瀬先輩が由紀先輩に怒られてる…」


蒼凛斗(りんと)くん。

蒼くんの弟だったりする…。


「凛斗ー、俺は桐山さんに怒ってるんじゃないんだけど」

「でも、由紀先輩が怒ってたから」

「怒ってないって」


凛くんと由紀先輩が言い争っていた時、由紀先輩の目が私に何かを訴えてきた。


「凛くーん」

「七瀬先輩、大丈夫なんですか?」

「私怒られてないからね。それより、先輩よりも楽器出すの遅くていいのかなー?」

「じゃあ後でね先輩」


凛くんは急いで楽器を出してクラリネットパートの使う教室へと出ていった。


「ありがと、桐山さん」


苦笑いで私にお礼を言う由紀先輩。


「いえ、元々は私が楽器を出すのが遅かったのが原因ですし…」


そうだ、蒼くんの事なんて考えるから。

だからだよ、さっきの凛くんの笑顔を見て胸が痛くなったのは。


凛くんが、蒼くんと似てたから……