「桐山(きりやま)さーん」
そんな事を音楽室で楽器を出しながら考えていると、誰かに呼ばれた。
「桐山さん、めっちゃぼーっとしすぎ。楽器早く出しといてよー」
そう言った人物は、吹奏楽部の岸谷由紀(きしたに ゆき)先輩。
こんな可愛い名前でも、れっきとした男の先輩。
私達2年生が1年の頃は、3年生、つまり去年の2年生が面倒を見てくれていた。
基本、1年生の面倒やら指導やらは1つ上の先輩たちがすることになっていて、3年生はサポート役に回る。
クラリネットの2年生が3人いて、3年生も3人いたためか、指導してくれる先輩はいつも決まっていた。
私の指導者が由紀先輩だった。
"だった"とか言ってしまったけど、過去の話とかではなく、この関係は卒業するまで続くらしい。

