「聞いてる?なにやってんの」
「あ、あの…」
おかしい。明らかにおかしい。
いつもの癒月じゃない。こんな癒月は見たことがない。
いつも強気でプライドの高い癒月が、こんなに泣きそうになるなんて。
「糸田?」
静まり返っていた靴箱に、声が響く。
それを合図にするかのように、校庭の方から野球部らしき声が聞こえてきた。
玄関から夕日の光が差し込んできて、眩しい。
そんな玄関に姿を表した声の主。それは、
「あ…、蒼…」
蒼くんだった。
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