「………」
「履いてきたんだよね、うーん」
「えっ!?」
「えっ」
私、今なんて思ったの?
由紀先輩のこと、可愛いと思った?
普通に思っていたことだったけど、今のはサラッと流していいところじゃないよね。
どうしてそんな事思ったんだろ…。
「やっぱり履いてきてなかったの?」
「どうしてなんでしょう…」
「なら靴箱にあるはずないじゃん」
「いや、靴は履いてきましたって」
若干話が噛み合ってなかったけど、今は靴の方が大切なんだった。
由紀先輩と2人で唸っている時、
「あっれれ〜?こんなとこにゴミがあるわねぇ。捨てとかなきゃ」
後ろから癒月の声と何人かの女子の笑い声が聞こえてきた。
由紀先輩と同時に後ろを振り返ると…
「あっ」
「ん?」
「私の靴…」
癒月がつまみあげてる靴は、紛れもなく私の靴だった。
私はそんなに鈍感でも鈍くもない。
癒月が今から何をするのか、それを瞬時に理解してしまった。
カンの鋭い由紀先輩もそれを感じ取ったのか、「糸田(いとだ)…」と、癒月の名前を呟いてそちらを睨んでいた。

