気づけばもう帰りの時刻で、放課後になっていた。
最近、時間の感覚が全くない。
どれも、由紀先輩の事を考えると時間が本当に早く感じる。
よく漫画や小説とかにある"ある人の事を考えるだけで1日が終わっている"というのは、あながち間違えでもないんじゃないかと思うようになってきた。
「ゆーづきー!帰ろう〜」
由紀先輩と待ち合わせてるので早く教室を出ようとすると、クラスメイトの声が私の耳に響いてきた。
癒月とは、あの踊り場の時から一言も会話をしていない。
最初は由紀先輩や凛くんも心配していたけど、なにが気に食わなかったのか、癒月は徹底的にシカトを決め込んでいた。
だから私も癒月には話しかけたりしていない。
同じパートでも、もう1人の2年生を板挟みにして本当に大切な事だけを伝えあっている。
私はまた癒月と仲良くしたいんだけどな。
「いいよ、帰ろう」
癒月の声を、久しぶりに聞いた気がした。
「でも、蒼と帰るかもしれないからわかんないけど、いい?」
癒月と目が合って、一瞬、ほんの一瞬だけど、なんだか睨まれた気がした。

