「え?靄埼?どうした?」



「乱華、大丈夫?気分でも悪くなった?」



梟仔の声で気付いた、獺行と右凍も心配そうに問い掛ける。



「だ、大丈夫……違うの、違うから………」



大丈夫、違う、と繰り返す。


けれど、いくら涙を拭っても、一向に止まってくれなくて。







気分が悪い訳でも、悲しい訳でもない。


ただ、思い出しただけ。



真っ暗な世界から見上げた、偽りの夜空。


時間を越えて重なって、見えてしまっただけ。



分かってたのに、追い続けた。

そんな一年前の自分を。




見ているだけが精一杯で、
君の隣がいいなんて烏滸がましくて、


けれど、今はこんなに近くで。





付き合えるなんて、
想い合えるなんて、

思ってもみなかったから。





驚かないで、心配しないで。

そう思うのに、いつだって真実は残酷なんだよ。



幸せに、涙が溢れただけなのに

そんな顔をさせてしまうんだから。