大河と一緒に生活するようになって数ヶ月。

大河の腕の中で目覚める朝に、まだ慣れないでいる。

毎朝、大河の寝顔にドキドキするし、仕事があろうが無かろうが関係なしに朝から目覚めのキスから始まり、深くなっていくキス。
そして…もっとと思うと離れていく唇。

物足りなさを残して、意地悪く笑う大河
の首に腕を伸ばして求めるのに、わざと離れていく体。

だから時たま、私は逆襲する。

仕事が休みの日の朝は、大河に翻弄された重い体を起こして、隣の住人である兄の元へ。

一緒に住んでいた数ヶ月、帰りも遅く放っておいたら朝食も食べずにギリギリまで寝ている男に朝食を作りに行くついでに様子を見にいっている。

あんなに毛嫌いしていた兄だけど、お互いの恋愛を相談しあったあの日からわだかまりがなくなり仲良くなった気がする。

それが面白くない大河は、休みの前の日は必ず必要に求めてくるのだ。

大河が目を覚ます前にそっと抱きしめる腕から抜け出し着替えると、忍び足で玄関へ。
そして、音を立てないように鍵を開けて
外に出るとそっとドアを閉める。

そこでやっと、ホッとすることができるのだ。

何度か、目覚めた大河に玄関先から引き戻されひどい目にあった事があるからだ。

ひどい目というのは、キス魔の大河が体中いたるところに残すキスマーク。それが隠しようのない場所にわざと残し、意地悪することだ。

見えるキスマークのまま、兄の元へ行けるはずがなく断念するしかないとわかってやるからタチが悪い。

そんなことしなくても口で言えばいいのにとつけられる度に言うのだが、やめる気はないようだ。

だから、こうしてそっと出ないといけない。

握りしめていた兄の部屋の鍵を開け、玄関のドアを開けるとそこにあった女物の靴が目に入った。

リビングから楽しげな兄さんの笑い声と女性のかわいい声。

突然、兄の甘やかな声で彼女の名を呼ぶ声にドキドキしだし、私はそっとドアを閉めた。

ドキドキする胸を押さえ、彼女が兄の愛しの人だとわかってホッとする自分がいる。

あの兄が、やっと大切な人と出会い結ばれたことが嬉しくて大河に報告せずにはいられない。

寝室で寝ている大河の元に勢いよくダイブして男を起こす。

「……おはよう、起きてよ」

「…そんな起こしかたしてきてどうしたんだ?まずは、キスからだろう…」

あっという間に体勢が逆転して、唇が塞がれてしまう。