マンションの駐車場
私がいる助手席に手を置いて首だけを後方に向けて、ハンドルも見ないで起用に回し一発で駐車する大河に見惚れていた。

「で、俺がお前の事で悩んでいたって言ってるのに、どう言ったら信じるんだ⁈」

エンジンをかけたまま、顔を私に向け、助手席にあった手は私の髪を指に絡ませて遊んでいる。

「わかんないわよ。…いつも自信満々で女の人から寄ってくるのに、私なんかじゃなくても綺麗な人が次々といるような人が……」

甘い声が一瞬にして低く怒りを含んだ声に変わる。

「私なんか‥なんて言うな」

「……」

「俺が好きになった女なのに、自分のことをそうやって言うなよ。どんな美人がいても俺は美咲がいい。意地っ張りで、頑固で、男嫌いなくせに俺とキスする時は可愛く反応するし、からかったらムキになって顔を真っ赤にして言い返してくる‥かわいい美咲が好きなんだ。目の前に美咲がいるのに触れたくても触れられないなんて、俺にとってどんなに酷だったか⁈これが悩まずにいられるかってーの」

赤面することを冷静な表情と口調で淡々と言う男に、真っ赤になるやら呆れるやらで口が開いたまま言葉が出てこない。

私をどんなに好きか言ってくれるのは正直、とても嬉しい。

だけど、悩んでた理由ってそんなことなの⁈

私なんて、冷たくされて悲しくて、キスしなかったから嫌われたと悩んでいたのに……

もっとさ、危機感とかなかったの?

「ねぇ、私達終わりだとか思わなかったの?」

「思うかよ。美咲が俺を好きなのは見てればわかるし、キスしてこないぐらいで嫌いになる訳ないだろう⁈この1ヶ月、美咲の頭の中は、俺でいっぱいだったはずだ。でも、さすがに天宮が告白するなんて思わなかったし、正直焦ったけど…他の男が入る隙なんて与えない」

はぁ…
この男は…どれだけ私の心を見抜いているのか⁈
私が大河を嫌いにならないと絶対の自信
があったって事⁈

どこまで、自信家なのだろう⁈

「私、自惚れる男って嫌い。そうやって自信満々に言い切るけど…人の心なんて一瞬で心変わりするんだからね」

「自惚れてるつもりないけどな…男嫌いのお前を俺に向けさせる為に公私混同してめちゃくちゃなことしてきたんだぞ。
それだけ必死だったってことだ…例え、美咲が他の男を好きになったとしても、また、俺に惚れさせるだけのことだ。まぁ、他の男を好きになるなんてあり得ないけどな…」