「好きにしろ…」

口に出た言葉が自分自身を苦しめるなんて思いもしなかった。

出社した月曜
天宮は早速、美咲に近づき出した…

楽しそうに天宮と話している美咲を遠巻きに見ていたら、俺に視線を向ける天宮が勝ち誇るような笑みを浮かべる。
イラついて、八つ当たりして美咲が向ける視線にも気づかないふりをして口も聞かない日が続く。

美咲が素直に俺の名を呼び、腕の中に飛び込んで来れば、抱きしめてキスして俺の負けを認めてもいいのに…

切なく俺を見つめる美咲に何度、彼女の手を引こうと腕を伸ばしかけたことか⁈

我ながら、大人気ない行動だと思いながら今さら後には引けない。

このままでは、ダメだとわかっていた。
何かきっかけがあれば…悶々とした時間だけが過ぎ、船上パーティー当日

天宮が、戦線布告をしてきた。

「今日の告白タイムの前振りに彼女に告白します。会社の事を考えると断れないですよね⁈邪魔しないでくださいよ」

はあっ…
参加者の前でか?

過ぎていく時間の中、どうすればいいのか考えていた。

天宮の告白を邪魔する手段
そして、美咲と仲直りする手立て

何かいい手はないのか?

とうとう、告白タイムが始まり、天宮の告白にいても経ってもいられず、壇上に登り彼女を腕の中に抱きしめた。

そうだったんだ…
潤む彼女の瞳を見てわかった。
何も考えずに彼女を抱きしめればいいだけだったのに…

彼女の心を確かめる。

「………お前には俺だけだろう?」

悔しそうに睨む美咲に言わずにいられない。

「返事はキスって言われなかったか?」

頬をほんのり染め触れてくる唇。

どうでもいい事に意地になって気不味くなるなんて、金輪際ごめんだ。

もう、掴んだこの手を2度と離さない。
ギュッと握り、彼女に振り向く。

真っ赤な顔でうつむいていた彼女が顔をあげて

「大河のバカ…何がお前には俺だけだろう?よ。……どこから…その自信でてくるの?あの場面で、大河が来なかったら……天宮くんの告白受けてたんだから…」

泣き叫ぶ美咲を抱きしめ優しく囁く。

「意地をはってごめん。でも、どうしても美咲からキスして欲しかった。この1ヶ月辛かったけど…やっとこうして抱きしめてキスできた」

「答えになってない…」

「不安だったさ…だから、公衆の面前で天宮の邪魔をして、美咲は俺のだって見せびらかしてきたじゃないか」

呆れる美咲には、あいつらにまんまとはめられなんて言わないでおこう。