私をのけものにして2人は楽しんでいた。

その日から一週間

例の船上パーティーが開催され、港に停泊してある船に次々と男女が乗船し、総勢、100人ぐらいの参加者達が、思い思いに意中の相手をさがしてあちらこちらで盛り上がっている様子を遠巻きにただ見つめている私。

相手の気を引こうと懸命に頑張っている人々。私も彼女らのように男の気を引こうと頑張ればいいのだろうが、糸口がみつからない。月曜に会った社長は、さらに機嫌が悪くなり、私を拒むように返事もせず視線も合わせてくれなくなっていた。

こうなってしまうと社内恋愛の面倒なところだと痛感し、ここまで嫌われてしまっては、今さらどうしていいのかもわからず、拒んだことを後悔するだけだった。

彼の側に寄って拒まれるのが怖くて、距離を置いて遠巻きに見ている。

そんな私の側に天宮くんがいて、今日の進行役を務めている。

「そろそろ、時間だ…美咲ちゃん、バラの花用意してあるよね」

「はい…」

「よし…参加者達にとって今日は特別な日になるといいね。もちろん、美咲ちゃんにとってもだけど…」

にこやかに笑う天宮くんと一緒にバラの束が入ったバケツを持って壇上に上がった。

「お集まりの皆さん、意中の人にアピールできたでしょうか?本日は、スペシャルイベントとして告白タイムをご用意いたしました。告白したい方がいる方はこちらのバラを手に持ってその方の前に…そして、友達からならOKという方は頬にキスを、交際OKという方は唇にキスをしていただきましょう」

ざわつく人々に天宮くんが

「皆さん、お静かにお願いします。僕の告白を聞いてください」

バラを手に持った天宮が…

「溝口 美咲さん」

「はい…」

「初めて会った時、一目惚れしました…
社長と付き合っていると知って諦めようと思いましたが、うまくいっていないようなので諦めるのをやめました。僕と付き合ってください」

これはいったい…
辺りを見渡すと参加者達は、この告白を本当だと思い私がどう返事するのか見守っている様子。その向こうでニヤつく森井さん達がいて、社長は…どこ?

突然、腕を掴まれ誰かの腕の中に…

「お前に美咲を渡すかよ。……美咲、お前には俺だけだろう?」

私の頬を撫で指でグイッと顎を男の口元まで持っていくと

「返事はキスって言われたよな?」

勝ち誇った笑みを浮かべた男。

悔しいけど、みんなが与えてくれたきっかけに感謝して男の唇にキスをした…。