『……はい…それでは、写しの左上にあるナンバーを教えてください』

番号を淡々と言うと

『それでは、お客様のお名前、電話番号とご住所、それから発送先のご住所をお願いします』

「はい…ちょっと待ってください」

通話口を押さえた。

「兄さん、ここの住所教えて」

頷くと奥の部屋に行く男の背を見ながら
電話の向こうに喋り出していると、部屋から出てきた男にここの住所を書いた紙を渡され目だけでお礼を言う。

電話の向こうで復唱する相手に

「はい…大丈夫です。お願いします」

通話ボタンを押して電話を切った。

はぁ〜と声に出ないため息をついて安堵しているとカウンターテーブルの方からジャランと音が鳴る。

鍵を見せるように揺らして微笑む男。

「今日は俺の休みなんだが、特別に運転手してやるよ」

なんのことと首を傾げていると

「うちには、俺のベッドしかないからな…お前の寝具とか必要な物を買いに行くぞ」

あーなるほど…

でも、無駄に広いくせに何もないんだ。

そして…急いで玄関先へと行く男の背を追いかけた。