…………ンッ………ん…はぁっ…ぁやぁ……

なに?これ?
気持ちいいんだけど…

瞼に触れる温かい温もりに目を開けると
目の前に覆いかぶさる大河の顔があった。

……えっ

「…な、何してるの?」

「おはよう…美咲」

「あっ…おはよう……じゃなくて、何してるの?」

「寝ている美咲がかわいいからキスしてた」

そういいつつ、首筋に顔を埋め唇を這わせている。

「ちょ、あっ…やぁ……ンッ、やめて」

「そんな格好で無防備に寝ている美咲が悪い。そのかわいい声きかせろよ」

肌に触れる唇と響く声から逃げたくて大河の胸を押して拒むのに、私の手を掴みベッドに縫いつけるように大河の手が私の手を押さえつけてくる。

「やだって…くすぐったく」

首を左右に振り抵抗するのに、下から覗いて意地悪く笑っている大河。

「チッ…しかたないなぁ」

全然、そんなふうに見えない。
何か企んでるよね⁈

押さえつけていた手に指を絡めてきて、ぎゅっと握ってくる。

その手を口元まで持ってくると、近い距離で私と視線を合わせ、目の前で絡めた指先ひとつひとつを啄ばんでキスを落としていく。

指先に残る唇の感触があまりの生々しくて、なぜ、そうするのか考える余裕もなく大河と見つめ合っている。

最後の指先に唇が触れた時、離れていく唇が憎らしく笑みを浮かべた。

ジンジンする指先
その手をまたベッドに押しつけ、今度は唇に温かな大河の唇が触れ、左右の頬、鼻先、おでこ、左右の瞼に唇が触れ、耳元まで顔を近づける。

「好きだよ」

と甘いバリトンボイスで囁かれ

「…ぁンッ」

声と共に体がゾクッと戦慄く。

男は耳元でまた

「感じた⁈…耳、弱いんだとは思ってたけど、こんなに反応いいならこれからは耳元で好きだって言ってやるよ」

耳元で囁く甘い声と、耳にかかる息に感じて唇を縫いつけるように閉じて、溢れる声を我慢して顎を仰け反らせ必死に耐えた。

それなのに…
男はクスッと笑い

「よく、我慢したな…それならご褒美だ」

そう言って耳朶を舐め、甘噛みして離れていった。

なんとも言えない感覚に、目の奥がチカチカして体中に力が入らない。

最後に私の頬を撫で

「起きれるようになったら出てこいよ」

ベッドから出ていく男の後ろ姿をボーと見ていた。

兄さんと違う男の上半身に頬を染め、割と筋肉質の背中に抱きつきたいと思ってしまう自分に

(私、欲求不満なの⁈)

と心の中で毒吐いていた。