美咲の兄貴じゃないが、俺も褒められた関係をしてこなかったと言っていいだろう。

仕事を優先して、女は二の次。

去っていく女に未練なんて感じなかった。

きっと、それだけの関係だったってことだろう。

だが、今、俺の腕の中で眠る美咲は違った。
彼氏でもないのに独占欲が湧いて公私混同をする始末。

彼女が側にいるだけで、抱きしめて魅惑的な唇を堪能したいと思うほど愛しい存在だ。

俺の目の届く範囲に置いておかないと心配でならない。

男嫌いの彼女にそんな気がなくても、あのかわいい笑顔と魅惑的な唇は男を引きつけ、男達が彼女を邪な目つきで見ているなんて美咲は気づかずにいる。

そんな彼女だから、初めて心を許した男に裏切られ傷ついた心は深いようで、どんなに愛を囁いても信じてもらえないもどかしさに、今だに彼女を裏切った男に腹が立ってしかたない。

だが、そいつがいたおかげで美咲と出会えたのだから、複雑な気持ちだ。

そして…男嫌いの元凶になっている美咲の兄貴。

男は、見た感じ恋愛観がどこか欠落している。

その男が、好きになった女に戸惑い己の心を素直に認めれず彷徨っている姿を昨夜見せられた。

まだ、彷徨い続けるだろう男と美咲が一緒に暮らせば、昨夜、悪い方向へ考えを巡らせた彼女なら俺との関係に溝ができて離れていく可能性がでてくる。

男は嫌いと言い恋愛に臆病な美咲が、やっとここまで気を許してくれるようになったのに…

離れていくと想像しただけで、胸が苦しい。
そんなこと許さない。

この幸せを知ってしまった今、彼女なしでは俺は…

そう思うとこのまま彼女を閉じ込めておきたい衝動に駆られる。

ふと、脳裏をよぎる邪な考えが名案だと思えた。

そうだ…
このまま、少しずつ違和感なく彼女をこの部屋に住まわそう。

その為の作戦を企てているなんて知らずに、彼女はまだ目覚めない。

俺のことだけを見て、側から離れたくないと思わせる最善の策

それは…今から始まる。