私は冷たい床の上で正座をし、ソファの上に座り腕を組んで私を見下ろす男に説教されている。

「お前は、バカか⁈普段、男を毛嫌いして警戒している癖に、そんな男にやすやす騙されて仕事もお金も無くし、住む場所も失うなんて…」

「……すみません」

相当、怒っているのか威圧的な声にびくつく私。

「三流ドラマのような出会いに偶然が重なって怪しいと思わなかったのか?普段のお前なら相手にしないだろうが、向こうは詐欺のプロだろう。男に免疫がない女だって簡単に見抜かれて運命感じたとか言われ簡単に騙されたんだろう⁈」

はい…確かにその通りです。
偶然会うたびにそれとなく言われてました。

縮こまる私を見てため息をつく男。

「……詐欺の手口のひとつだからなぁ。徐々にマインドコントロールして疑問を与える隙を作らない。そして…気を許したところで一気にお金を奪うんだ。取られたお金は戻ってこないし、痛い出費だろうが勉強になったと思って諦めろ……まぁ、とりあえず、警察に被害届けでも出しとけよ。もしかしたら捕まるかもしれないしなぁ」

「……はい」

頭を垂れる私の頭をポンポンと優しく叩いた。

「お金が貯まるまで無償で置いてやるよ。ただし、部屋を貸すかわりに掃除、洗濯はお前の仕事だ」

「ありがとう。でも、そんなことでいいの⁈ご飯も作るよ」

「仕事もあるし、女とのデートあるし、いつ帰るかわからないな。適当に食べるから、お前は自分の分だけ作ればいい。兄妹なんだからそんなことで気を使う必要はない」

「……」

女⁇
どうせ、その場限りの女でしょう。

「ところで、衣類はあれだけか?」

玄関先にあるスーツケースを指差し、私を見ている。

「あっ、残りは宅配にしたんだった…」

「まさか、引っ越す予定のマンションにか?」

頷く私に頭を押さえ深いため息を吐く男

「控えの写し持っているんだろう…さっさと業者に連絡してこっちに送ってもらえ」

「……はい…」

そんなに怒らなくてもいいじゃない。
すっかり忘れていたんだもの。

口を尖らせ怒られたことを不満気に見ていると、苛立ちを露わにした男に怒鳴られた。

「……さっさと電話しろ」

「は、はい」

カバンからスマホと発送の手続きをした写しを取り出して電話をかける。

『……お電話ありがとうございます。しろくま運輸です』

「すみません、発送した箱を別の場所に送っていただきたいんですけど…」