社長の解散の合図で出口に向かう人々。

今日のイベントスタッフは、企画した森井さんと鈴木さん。社長は必ずイベントを開催する時は出席するから、必然的に秘書の私は行動を共にする事を約束させられスタッフとして参加していた。

私が胸の名札を受け取り終えると社長はホテルのスタッフに挨拶中。

私の横で、名札を受け取っていた森井さんに席を外していた事を謝った。

「途中、抜けてすみませんでした」

「ふふふ、…いいのよ。私達スタッフが30分ほどいなくなっても、誰も詮索しないわよ」

30分近く2人きりであんな事をしていたのか思うと頬が染まる。

そんな私を見て森井さんが

「でも、意外だったわ。あの社長が嫉妬するなんて…」

はい⁈

「森井さん…今、なんて…?」

「えっ…だから、今日の男性会員のお目当は美咲ちゃんだったみたいなの。でも、スタッフだからあからさまに口説いてこなかったでしょう⁈酔った男が美咲ちゃんに言い寄ってるを見た社長が仕事を忘れて連れ出すなんて珍しい光景よね」

うふふ…と思い出し笑いをする森井さん

「それで30分ほど2人きりで何してたかなんて誰も詮索しないって言ってるんだけど…まぁ、戻った社長の唇を見た数人の男性は睨んでたけどね」

詮索しないって言ってますけど…何してたかなんてわかってるんですよね。

恥ずかしくて頬が赤らんでくるのを止められない。

私に鏡見て戻れって言ったくせに自分はどうなのよ。
バカじゃないの…と毒吐く。

天然ぶりを露見させた森井さんが

「今度、百合子さん交えて女子会しましょうね。白状してもらうわよ」

楽しそうに笑っている森井さんに彼氏である鈴木さんが会場の片ずけを終わらせてやってきた。

「お疲れ…ところで美咲ちゃん、社長といつから付き合ってるの?」

こっちも天然⁈
いきなりそれですか?

「……付き合ってないです…よ?」

「えっ…付き合ってないの?てか、どうして疑問?えっ…えっ…じゃあ、あの社長の口紅は?」

質問だらけの鈴木さんに戸惑っている私を助けてくれたのが森井さん。

「琢磨、うるさいよ……今度、女子会して聞き出すんだからそれまで待ってて…」

助けてくれた訳じゃなく、楽しんでますよね。

「そうなの⁈じゃあ、隅々まで聞き出すこと」

「もちろん…」

わぁっ…女子会嫌です…やめましょうよと心の中で叫んでいた。