いや…ちょっと待て
今、聞き捨てならないことを彼女は言わなかったか?

「なんて言った⁈…もう一度言ってみろ」

彼女の両肩を掴み尋ねる。

「ですから、リハビリは必要ないです。命令には従えませんって言いました」

「その前になんて言った?」

苛立ち、掴んでいる肩をぎゅっと掴んだ。彼女の表情がビクついていたが、今は、そんなことどうでもいい。

その前になんて言ったんだ⁈

「男が嫌いでも仕事はします⁈」

「そう、それだ。苦手じゃなくて嫌いってなんだ?まさか…女が好きなのか?」

苦手なら克服すればいいと簡単に思っていた俺は、リハビリと言う言葉で彼女を側に置こうとしていたのに、もし、女が好きだっと言われたら、立ち直れない。

ビクついていた彼女が、一瞬、あ然としたし、焦る俺に今度は吹き出した。

「ぷっ…そんな訳ないですよ」

ホッとするも理由が知りたい。

「それなら、どうして嫌いなんだ?」

「それには、…いろいろとあるんです」

「いろいろってなんだよ?」

「プライベートなことまで社長に言わないと行けないんでしょうか?」

プライベートって言葉で線引きされ、恋人でもない、赤の他人の俺に話すことはないってことなんだな。

「わかった…理由は聞かない。仕事に差し支えなければそれでいい」

「ありがとうございます」

引きつりながら微笑んで、自分の両肩にある俺の手を振り解こうと手をかけてきた。

だが、このまま終われない。

彼女を怯えさせないように、冷静な口調で…

「あなたが男を嫌う理由はわからないですが、僕は、あなたに好かれたいと思っています。経営者として、1人の男として信用してもらえないでしょうか?いえ、訂正します。信用してもらえるように努めたいと思っています」

ほんのり彼女の頬がピンク色に染まる。

「僕に、あなたに好かれるチャンスをくれませんか?」

「その…よくわからないんですけど」

目を何度も瞬きし、言葉の意味を探っているようだった。

公私の区別はつけてきたのに、まさかこの歳で会社で告白なんてすると思っていなかった。

それなのに、よくわからないと言う。

はぁっ…
後に引けない俺は、彼女の頬を押さえ唇にそっと触れてから

「…僕は、君が好きだと言ってるんです」

ボッと顔を真っ赤にし、ワナワナと震えだす彼女に先制をうつ。

「いつか、俺を好きだって言わせるから覚悟しろよ」