だから、無視すればいいと一歩踏み出した。

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私の目の前に立つ数人の男女。

「今日から一緒に働くことになった溝口 美咲さんです。彼女には、事務仕事をしながら僕の秘書も兼ねてもらうので皆さん、よろしくお願いしますね」

私の横で話ている男は、先ほどとは別人のように爽やかな男性だ。

微笑む男に前に出るよう促され一歩前に出ると

「溝口 美咲です。秘書経験もなく事務仕事にも不安があります。何もわからないず至らないところがあると思いますが一生懸命頑張りますので、よろしくお願いします」

暖かな拍手で迎えられ、緊張が緩んでいくなか、1人の女性が目の前に立つ。

「金城 百合子です。受付兼事務仕事もしているので、わからないことがあったらなんでも聞いてね。ちなみに社長とは彼が小さな頃から知り合いだから何かされたら力になるわよ」

年齢の割にウインクをするなんてお茶目な方だと思った。

「百合子さんひどいですよ。何かされたらなんて…僕が何をするって言うんですか?」

「ものの例えですよ」

あはははと豪快に笑う百合子さんに回りのスタッフは苦笑していた。

そして、イベント企画のスタッフの自己紹介。

副社長兼チーフの石井 勉さんは、50代ぐらいの男性。

30代ぐらいの鈴木 琢磨さんと森井 優香さん。そして、自分ぐらいの年齢の天宮 遥希くん。

後は、パートスタッフが3名いるらしいが、主に一対一のお見合いをお手伝いしているこの3名とは会う機会が少ないそうだ。

自己紹介が終わるとすぐに週末にある婚活パーティーの打ち合わせが始まり、その間、私は百合子さんに事務仕事の内容を説明してもらうことになった。

「美咲ちゃんって呼ぶから私のことも百合子さんで構わないわ」

「はい…百合子さん」

嬉しそうに微笑んいる百合子さん。

「それじゃ、美咲ちゃんにしてもらう仕事なんだけど……」

説明が始まり、ホームページにイベントを載せて参加する会員の出欠を期日まで取り、会費の支払いを確認して招待状を送付することやイベント後のアンケートをとること、それを数字にまとめ提出するなど細々と説明を受け思っていたより仕事が大量にあることに驚き、それを百合子さんと振り分けて仕事をこなし、秘書もすると言うのだから説明を聞くだけで疲れていた。

「聞いているだけだと大変だと思うけど、作業は簡単だから慣れてくると平気よ」