可愛らしい笑顔に一瞬でハートを射抜かれた。

笑ったら可愛いんだ…

30にもなって一目惚れをするなんておかしなことだろうか?

「……ありがとうございます。あの…そちらもお掃除頑張ってください」

彼女の…乱れた髪と顔には白っぽく誇りぽかった。きっと、俺が、掃除をしている途中に手を止める原因になったから、そっけない態度だったのだろうといい方向へ考えてしまう。

部屋に戻り、緩む頬。
隣に彼女が住んでいるかと思うとテンションが上がる。

挨拶できる仲になれれば、そのうち仲良くなり毎日楽しく仕事に行けると勝手に妄想していた。

が、ふと我に返った。
隣人は、男が住んでいたはず。
それなら彼女は…恋人なのか?
それとも、結婚しているのか?

数分前の記憶を辿り、彼女の左手を思い出そうとするも、小動物のようなクリクリとした大きな瞳にぷっくりと膨らんだ唇が脳裏をよぎり彼女の表情ばかりしか見ていなかったことに気づく。

結婚していたらさすがに無理だろうが、恋人ならつけいる隙があるかもしれないと次回会った時にそれとなく確認してみようと決着をつけ、引っ越し作業に精をだした。



翌日

「社長、おはようございます」

「おはよう」

母の代からいる百合子さんが声をかけてきた。

「今日は、面接に来られる方がいましたよね」

「あぁ、そうだったね。朝一に来られるはずだから応接室に案内を頼むよ」

「はい…若い方ですかね?」

「確か、25歳と言ってよ。正直、求人募集をしても連絡があったのは彼女一人だから採用するつもりでいるよ」

「ふふふ、綺麗な方だといいですね」

「どうしてだい?」

「結婚相談所の社長が結婚してないのもおかしな話ですよ。仕事ばかりしてないでご自身の幸せも考えたらどうですか?」

長年、百合子さんもこの仕事についているからか、直ぐに誰かと誰かをくっつけたがる。

長くなりそうな話を切り上げ

「…そうだね。いい出会いがあればちゃんとチャンスをモノにするよ。仕事してるんで面接の方が来たら教えてください」

これ以上言われたくないから、逃げるように社長室に逃げ込んだ。

机についても、百合子さんの言葉が頭の中を過る。

結婚か?

結婚するなら彼女がいい…

昨日知り合った名前も知らない彼女の顔が浮かぶ。

あの唇に触れてキスしたい

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ーー

そう思っていた彼女が、今、目の前にいる。