今日は友人と遊ぶ約束をしたのだが、待ち合わせ場所に早く着いてしまった。

時間までまだ二十分ほどある。

どこか座れる場所は無いかと辺りを見回すと、すぐそこにベンチがあった。

俺はすぐさまそれに座って、暇つぶしにスマホをいじっていた。すると、いつの間にか俺の隣にホームレスらしき男が座っていた。


「......豚」

男が突然、前を指差しながら呟いた。

反射的に男が指した方を見ると、小太りの中年女性が歩いていた。

...失礼だろ。聞こえたらどうすんだよ。

「...人」

男はまた呟いた。今度は、スーツを着こなしたサラリーマンを指していた。確かに、どこにでもいそうなごく普通の人だな。

次は、ガリガリの青年を指し、「...牛」と呟いた。

いや、どう見ても痩せ細った鳥だろ。

その次は、結構太めの男を指し、「野菜」と言った。

は?絶対豚だろ。

ホームレス男が何を基準として人を判断してるのか気になった俺は、直接聞いてみた。男はこう答えた。



「私には、指をさした相手が食べた物を当てる能力があるんです」