マンションの一階でエレベーターのボタンを押した。

少し経つとエレベーターが降りてきて、ドアが開いた。

俺が乗り込むのと入れ違いに、黒ずくめの男が降りてきた。

すれ違う時に肩がぶつかった。

ふとぶつかった部分を見ると、ヌルヌルとした赤黒い液体が付いていた。

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次の日、大好きな映画を見ていると、部屋に「ピーンポーン」とチャイム音が響いた。

ドアを開けると、警察官が立っていた。

「昨日、このマンションで殺人事件があったのですが、不審者を見かけませんでしたか?」

そう質問された。

不審者というのは昨日のエレベーターの男のことだろうか。

正直に「見た」と言った方が良いのだろうが、そうすると話が長引いてしまう。

俺は早く映画の続きを見たかったので、「見てない」と答えてドアを閉めた。

翌週、ニュース番組でその事件が報道された。

どうやら犯人が捕まったらしい。

良かったじゃん、と軽く考えていると、テレビ画面に犯人の顔写真が映し出された。

それは、部屋に訪ねてきた、あの警察官だった。