ぼくのまわりにいる悪い人とぼくの中にいる悪い人

まだ健が産まれて間もなくの頃だったらしい。
それから健の母親は女でひとつで育てたのだ。

孫が出来る事を喜んでいたらしいが…
それを思い出し、今ここに健が笑って呑んでいることが痛々しく感じた。


『んで?野口は?』
『あ、俺すか…漁師ですー』

『まーいいや!』

ぼくは笑いながら答えた。


気が付くと客はぼくらだけになった。

…と思った瞬間。


『いらっしゃーい、ホント随分久々ーこれ食べな!アタシからのおごりだよ~』

フルーツだ。


『ママどうしたの?大丈夫かよ』


『うん、ぶんちゃんって言うより、久々の健ちゃん、あとそこのイケメン!おごっちゃう!今日は気分もいいし』



久々に楽しい酒を呑んだ。

なにより、健が楽しんでるのを見て楽しかった。


全員がそう思ったかも知れない。


ぼくはこの日弥生と一緒に帰った。

『オイ!弥生!着いたぞぉ、起きろ!』

弥生の部屋の前に着いたのだが全然起きない。


仕方なくぼくの部屋に向かい、駐車場に車を止める。


…弥生は直ぐに起きた。


…何も見え見えの、帰りたく無い作戦を使わなくても…


部屋に上がるとまた勝手にシャワーを浴び始める。