ぼくのまわりにいる悪い人とぼくの中にいる悪い人

誰かが、この男の後頭部を叩きつけた。

パチンコ玉を入れる箱で叩いたらしい。

箱は粉々になり、男は後頭部を抑えている。


ぼくは顔をあげた。

健っ!


男は後頭部を手で抑えたままゆっくりと立ち上がった。


『何をしよんねん…』


ゆっくり振り向くと同時に裏拳が飛び出し、健の頬にヒットした。


後ろにいた客の方へ健がぶっ飛ぶ。


ぼくも手を出さずにはいられない状況になった。


次の瞬間…


『ふざけてんじゃねぇぞ!表にでろ!』

そう言いながら健に蹴りをいれた…

『てめぇ 何荒れてんだよ…何壊れちゃってんだよ…何…』

ぼくは自分の拳から血が出るほど殴っていた。


次の拳が出る時に後ろから腕を捕まれた…


『兄さん…その位にしたれや、なんで泣きながら殴ってんねん…』


『そうか…そうなんや…兄さんコイツの兄貴分やなぁ、ほんなら話が早いわ、慰謝料仰山もらいまっさ』


男が喋り終わる頃、ぼくの足はこの男の腹に入っていた。


『てめぇはサッサと金払いやがれ!』


男がうずくまっていたが、ぼくは健をおんぶして車まで連れて行き、そのまま部屋に帰った。


途中二台のパトカーとすれ違いながら。