ぼくのまわりにいる悪い人とぼくの中にいる悪い人

ぼくはかける言葉が無かった…


1人の警察官が近寄って来た。


『ご主人ですか?』
『そうっすけど…』
『交差点を渡る際に信号を無視して来たと思われる車に跳ねられたようです…目撃者の話だと相当なスピードを出してたみたいで…』

『ひき逃げなのか?』

ぼくは聞いた。

『ナンバーを見たという方がいますので現在捜査はしている段階です』


…健は窓の外を見ながら呆然と立っているだけだった。


…急に涙が溢れてきた。
止まらない…


弥生とミンクのママが来た。



…全員泣き崩れるだけだ。


そのまま朝まで泣き続けるしかなかった。


…健は黙って、そしてさつきから離れる事もなかった。



2日後。
通夜が行われた。
さつきと産まれるはずであった赤ちゃんの戒名があった。


あまりに悲しすぎる。

健はあれから一言も口を聞かない。


ぼくも未だに信じられない、嫌、信じたくない自分がいたのだった…


翌日、葬儀が行われ火葬場からの帰り、雨が激しく降り始める。

葬儀場に着くと警察がいた。


ひき逃げの犯人が自首をして来たという。


40半ば。
木更津自衛隊の人間らしい事を新聞で知った。

健とは連絡が取れない。