ぼくのまわりにいる悪い人とぼくの中にいる悪い人

『貸してないみたい…』


『貸して無い…』

ん？貸して無い！


まさか！


弥生、今日の500万は！


『あっ！まさかっ！』


弥生が直ぐに客に連絡を取る。


『ぶん太…どの電話にかけても、現在使われておりません、って…』


全身から怒りが込み上げて来た。


左手で前にあるガラスのテーブルをひっくり返し、右手に持っていたビールグラスを窓に叩きつけた！


『ちょっと出掛けてくらぁ…』


ぼくは弥生に蚊の泣くような声で言って玄関をでた。


別に行く場所は無い。



また海に来ていた。


…いったい…


何故…あの健が…



ぼくは今までの健と出会ってから今日までの様々な出来事を思い出していたのだ。


電話はデタラメ、恐らく住所も登記簿も何もかもデタラメであろう。


完全に計画的なのだ。


咲希が言っていた気をつけろ、という言葉も鮮明に覚えている。