ぼくのまわりにいる悪い人とぼくの中にいる悪い人

9時を回り、ようやく客も少なくなってきた。

ビジネスホテルが隣接するこの辺の土地柄、仕事終わりに一杯飲んでホテルに戻る。

そういう人が多いようだ。


ぼくも最初はそうだった。


そもそも何故?こんなに会長に興味をもったのだろうか…


『おやっさん、一杯飲まない?』


『ほんまでっか?遠慮のういただきますぅ』


『出張で?』


『えっ?あ、はい…出張です』


完全にわすれてんのかよ…


…まっいいか…


『おやっさん、この商売長いんすか?』

『そうでんなぁ…上さん死んでしもうてからやから…もう15年位になるやろか…』


『その前は何やってたんすか?脱サラで始めたとか?』


『脱サラ?そんなんちゃうよ、他の商売やっとってん…』


『へぇ~何を?』


会話の途中に電話がなった。


弥生だ。


無視した。


また鳴る。


電源を切った。


『彼女とちゃいますぅ?出た方がエエんと違うかぁ、怒られまっせー』


『大丈夫ですよ、しかも彼女じゃないんで…』


『もう一杯飲むやろ?』


『うん、ください』

…結構飲んでるな…

閉店近くなり、おばちゃんも店じまいの雰囲気になってきた。