私は一息つくと那月から目線を外した。


……今日はなんだか、暑いな。


机の中から取り出した下敷きで首もとに風を送りながら那月に返事を返した。



「私は、工藤椿に興味なんてない」


なんてことのないような声色で。


今までとステータスは何も変わらない。

そう那月に思わせるように。



しかし、それは無駄な行為でしかなかった。



「そんなことないよ」



いやに確信めいた言葉に、扇いでいた手が止まった。


ふたたびと那月に視線を合わせるといつになく真面目な顔で、それでいて目元は柔らかかった。



「だってみっちゃん、顔真っ赤だもん」



それを聞いて胸がドキリと音を立てた。


今まで、こんなに動悸がしたかと思うくらい。



そして、手元の下敷きはそんな私の心を増長させているような気がした。


暑かったのは、気温のせいじゃなくて私自身が火照っていたからということで……


私は、工藤椿が気になるっていうことに…なるのか?



───俺、みちるが気になるみたい……



私の心とリンクするかのように工藤椿の言葉が思い起こされる。


それは工藤椿が私の関心の内側に入ってきた瞬間だったのかもしれない。