思い出して、気分を害した私は思わず眉にしわを寄せた。
それを見た那月は大げさな程、首を横に傾げていた。
その表情は不可解な返答だとでも言いたげそうなもので、何だか違和感を感じた。
「どうした?」
「いやー……その人は本当に工藤くんだったのかなと」
「え?」
「工藤椿くんは、これでもかと言うほど女の子にモテるけど…軽い感じと表すより、……むしろ難攻不落と言われてるくらいで…」
「……」
那月の言葉は要領を得ないものであったが、私が見た工藤椿とは正反対の印象であることが分かった。
では、あれは工藤椿じゃなかったのか。
……ううん、あれは工藤椿だ。
根拠はないけれど、何故かそうだと感じる何かがあった。
これが直感、というのか。
こんなあやふやな気持ちを確かだと信じ込もうと考えてる自分、……らしくない。
私は頭から工藤椿のことを振り払おうと、首を左右に揺らした。
そんな時、不意に那月がクスクスと笑い出した。
「今日のみっちゃんなんだか変」
「……は?」
唐突な那月の言葉に思わず顔をしかめると、那月はあっとしたように私の目の前で手をせわしなく振りながら言葉を付け加えた。
「あ、あのね、なんだかみっちゃんが、その…年相応の女の子に見えると言うか、そのね、つまりね……」
そう言って、言葉を切ったかと思うと
「私の引き出せなかったみっちゃんを工藤くんは引き出せてるんだなって……」
予想もしなかったことを言ったのだ。

