はじまったばかりだと思っていた春が、もう過ぎてしまったのかと思うくらいに蒸し暑い5月の午前中
私は教室でひとり音楽を聴いてぼーっとしていた。
インディーズのあまり知られていないバンドのゆったりとしたメロディーが、私の耳を支配している。
私はこうしている時が好きだ
周りのクラスメイトの喋り声が聞こえなくなり、自分だけの世界に浸れるからだ。
「ちょっとこれどういうこと!!」
そんな小さな幸せな時間を切り裂く程の大きな女子の声が、私の耳に飛び込んできた。
イヤホン越しでも聞こえたその声は、イヤホンをしていない人達にとって相当大きく聞こえたのであろう。
教室にいるクラスメイトの全員がその声の主に視線を集中させていた。
