「包丁を握る時はビクビクしない!!」

「は、はい!!」

「みじん切りになっていませんよ。あなたのみじん切りは微塵になっていません。ただ切っただけです!!」

「はいっ!!」

「混ぜる時は食材をボウルから零さない!!」

「はいいいい!!」

怒鳴られてうっすらと目尻に涙が浮かんでいるのは、きっと玉ねぎのせいだけではない。

優しく手とり足とり教えてくれるとは思っていなかったが、これはひどい!!

(鬼っ!!)

鬼教官宜しく仁王立ちであれこれ檄を飛ばす王子さんの背後に般若が見えてくる。

言い返そうにも王子さんの方が料理に対する造詣も深く、素人の私に太刀打ちできるはずがない。

そして、なにより本気で怖い。

目の色が変わっていませんか、王子さーん……。

そんな私の嘆きの声など般若と化した王子さんに届くわけもなく。

なにはともあれ。

格闘すること数時間。満身創痍になりつつも、ハンバーグが出来上がったのである。