「ごめんなさい!!」

私はそう言って潔く頭を下げた。

「あのからあげ、本当は私が作ったものじゃないんです……」

こうなっては正直に言うしかないと、大人しく白状する。

「やっぱり……」

王子さんは謝罪の台詞に不快感を示すような、苦々しい顔つきになった。

「お願いします!!皆さんには黙っていてくれませんか?」

ルールを破ったのは私だ。

王子さんからルージュランチがどういう意味を持つか教えてもらったにもかかわらず、保身を選んで菫さんからもらったからあげを持ってきてしまった。

だから、罰が当たったんだと思う。

虫が良いとは分かっているけれど、フィル・ルージュの人達との信頼関係にヒビを入れたくなかった。

王子さんに見破られた今となっては、恥を忍んで頭を下げるしかない。

「お願い……します……」

緊張で強張って声が震える。

必死の懇願を続けると、王子さんはしばし悩んだ末にため息をついてこう言った。

「明日は暇ですか?」

「はい……」

「朝6時、胡桃坂商店会のアーケード街の入口に来てください」

王子さんはそれだけ言い残すと、片づけの始まった会議室に戻って行った。

(黙っていてもらえるのかな……?)

……午後の業務が始まっても変わらぬ態度の王子さんを見て、私は少しだけホッとしたのだった。