「あ!!ずるーい!!最後の一個だったのに!!」
ぼうっとしていた頭に麻帆さんの悔しそうな声が大きく響いた。
「うるさいですね。早い者勝ちでしょう。ルージュランチの鉄の掟を忘れたんですか?」
「折角の望月さんの手料理だったのに!!」
からあげの最後の一個を取ったのは……王子さんだった。
ぶーぶーと口を尖らせブーイングを放つ麻帆さんをあっさり無視して、王子さんはからあげを口に放り投げた。
(あ……)
ダメ!!っと止めることも出来なかった。
いや、止めたとしてもどうにもならなかったに違いない。
王子さんはからあげを一口食べるなり目を見開いた。
そして、口元を押さえ箸を小皿の上に置くと、ゆっくりと私のいる方向に足を進めた。
「望月さん」
名前を呼ばれて、ビクリと身体が震える。
「ちょっと来てください」
王子さんはやましい心を見透かすように、真っ直ぐ私の目を射抜いた。
ランチタイムの王子様は……何でもお見通しなの?



