ベッドに寝転がりながら、冷蔵庫の中にしまったからあげのことを考える。

菫さんが作った美味しいからあげ。

衣はさくさくと香ばしく、お肉はジューシーで肉汁が溢れだしてくる。

出来合いのお惣菜が並んだ寂しい食卓の中でも主役級のおいしさ。しかも味は折り紙付きである。

からあげの隣には昨日まで私が試作したハンバーグもどきが、ラップをかけられ保存されている。

私はおもむろに冷蔵庫を開けるとお箸でハンバーグもどきをつまんで口に放り投げた。

「うっ……」

かなりの覚悟をしたつもりだが、うっかり吐き出しそうになってしまった。

(まず……!!)

口の中には何とも言えない苦みと、舌の上がピリッとするほどの異常な塩気が一気に広がって、ゲホゲホと咳き込みながらミネラルウォーターで口をゆすぐ。

からあげと比べると味は雲泥の差である。おおよそ人に食べさせられる代物ではない。

タオルで口元を拭って、からあげとハンバーグもどきを見比べる。

(私の作った味の保証のできないハンバーグよりはいいよね……)

これで本当に良いんだよね?

ジワリと目尻に浮かんだのは、フィル・ルージュの皆さんに失望されなくて済むうれし涙ということにしておこう。

……いけないことだとは分かっていた。

それでも、なけなしの自尊心を守りたかった。

私は自分自身を無理やり納得させると、菫さんの作ったからあげをタッパーに詰めたのだった。