菫さんは何かを察したのか私の肩を何度かポンポンと叩くと、締めかけのシャッターをくぐり、店頭からレジ袋を持ってきた。

「これ、持って行きなさい」

袋の中を見るとパック詰めされたからあげが入っていてぎょっとする。

「すみれさ……」

「ひばりちゃんはよく頑張ったわ。指に巻いてある絆創膏がその証拠!!今回は特別よ。温め直せば明日のお昼でも美味しく食べられるわ」

絆創膏だらけのみっともない手を握られて、かあっと頬が紅潮する。努力の証と褒められたってこの場合は気まずいだけだ。

「でも……」

なお食い下がろうとすると、菫さんが柔らかい笑顔で語り掛けてくる。

「ひばりちゃんが何に苦しんでいるのかは分からないけれど、ご飯っていうのは作る方も食べる方も幸せでなければいけないのよ?」

作る方も、食べる方も幸せ?

菫さんの教えがすうっと胸の隙間に入っていって、心の中にストンと落ちていく。

「受け取ってくれる?」

「はい……」

私はそれ以上何も言い返せなくて、ビニール袋を受け取ってしまったのだった。