「……あんまりうるさいと、あなたが秘密にしているあれやこれを暴露しますよ?」

「ゴメンナサイ。ユルシテクダサイ……」

先ほどまでの勢いはどこへやら麻帆さんはすっかり大人しくなると会議室の片隅で丸くなった。よほど恐ろしい弱みを握られているらしい。

「良かったら、今度なれそめを教えてね?」

ゆりあさんは麻帆さんと同じ轍は踏むまいと私にこっそり言い残し、気を遣ってふたりきりにさせてくれた。

「新メニューの評判はどうですか?」

「上々ですよ。部活帰りの学生の間で評判になっているらしいです。まあ、当初のターゲットと異なる層にヒットしましたが、結果オーライです」

菫さんは退院すると同時にキッチンすみれを再開させた。ひとりで無理をしないようにと、パートをひとり雇い入れ今日も元気に胡桃坂商店街で働いている。

「明日は……土曜日ですよね。ご飯食べに行っても良いですか?」

「……朝まで帰さないので覚悟してくださいね」

耳元で囁かれるのは、無愛想な王子さんに似つかわしくない愛の台詞。