「よし!!王子に聞いてこよう!!」

「いいですね!!お供します!!」

「勘弁して下さい!!」

間違ってもこれしきのことで止まるようなお姉様方ではない。

左腕をゆりあさんに右腕を麻帆さんに掴まれて、ずるずると引きずられるようにして王子さんの前に放り出される。

「お・う・じ・くん!!」

麻帆さんの猫なで声に寒気がしたのか、王子さんはビクンと背中を揺らした。

「何ですか?藪から棒に……」

「ねえねえ、望月さんのどこが好きなの?」

はあ?っと眉を顰めた王子さんに“すみません力不足で”と目線だけで訴える。

王子さんは“マヌケ”と口パクで返してきた。

正式にお付き合いを始めたことは、会社の人には秘密にしておこうと決めていたのに、まさか速攻でバレるとは思わなかった。

「あなた方に教える義務はありません」

「やだー。ふたりっきりの時ならサラッと言っちゃうってこと?」

王子さんをからかう機会なんて今後一切訪れないことを分かっているのか、麻帆さんは水を得た魚のように生き生きとこれでもかというほど茶化しにかかる。

王子さんはうっとおしいと言わんばかりにこめかみをひくつかせ静かに告げた。