「菫さん、お加減はいかがですか?」

「ひばりちゃん!!来てくれたの?」

仕事帰りに病室を訪ねると菫さんは嬉しそうに顔を綻ばせると、ベッドから身体を起こしてくれた。

パイプ椅子に座って話を聞くと、手術の経過は良好らしく徐々に食事も摂れるようになっているらしい。

「胃潰瘍なんて笑っちゃうわよね。こーんなに太っているのに」

菫さんはおどけるように大きめのお腹をポンッと叩いた。

「やだ、菫さん。太っていることと胃潰瘍は関係ないですよ」

普段と変わりないように思えるけれど、やはり倒れた影響は身体に如実に現れていた。

ふっくらとしていた頬はこけ、腕の点滴の痕は目を背けたいほど生々しかった。

「あの……王子さんは?」

「瑛介ならもう帰ったわよ」

「そうですか……」

家で仕事でもしているのかしら……。

王子さんの普段の仕事量を考えたら、朝早めに出社して仕事をしたとしても追いつかないはずだ。

「あ、これ。お見舞いです」

りんごを買ってきても剥く技術がないことと、胃を悪くした人のところに食べ物を持って行くのも気が引けて、代わりに暇つぶしになりそうな映画とドラマのDVDを近所のレンタルショップで借りて持参してみた。

以前、立ち話した際に人気の刑事ドラマに出演している俳優が好きだと言っていたので、同じ俳優が出演している映画を探したのだ。