リビングへと場所を移し、朝霧さんと王子さんの話の続きを聞いた。
本音を言えば聞きたい話ではなかったけれど、王子さんのグラタンを食べた私には知っておかなけれなならない義務があるような気がした。
「萌と私は同じゼミの先輩と後輩なんですよ。学生の頃は良かったのですが、社会に出ると互いにすれ違いが多くなりましてね。特に彼女は本格的に芸能界で活躍しようと奮闘している時期でしたし……」
自分のことを多くは語らない王子さんの昔話はある意味貴重である。
私は一言も聞き漏らすまいと、カーペットに正座して耳をそばだてた。
「当時の萌は太ることを異常に恐れていました。時間があればジムに通い、食事の量も極端に減り、私の目にはやせ過ぎのようにも思えました。
夜食にグラタンを作ったのはそれが萌の大好物だったからです。少しでも食事をとって欲しくて……。それも、余計なおせっかいだったようですが」
グラタンに罪はない。
罪はないけれど間接的な破局の原因になったことには変わりない。
……王子さんもきっと苦しかったんだ。
拒絶されたのが苦しくて悲しくて、いっそのこと封印してしまえば良いと思ってしまうくらいに。



