(王子さんにお世話になってばかりだな、私……)

蛇口から流れる水をぼうっと眺めながら、グラタンが入っていたステンレスのお弁当箱を洗う。

料理の腕も、仕事のスキルも当然王子さんには全然敵わない。

唯一勝っているところは食い意地が張っているということぐらいか。

(うーん……情けない……)

情けなさ過ぎてため息が出てきそうだ。

こんな調子ではいつか王子さんに呆れられて、見放される日がやって来てしまう。

私だって少しくらい、やれば出来るんだぞってところを見せなくては。

綺麗に拭いたお弁当箱を手にして考えるのは、無愛想なランチタイムの王子様のこと。

心も身体も……いや、胃袋も。
こぞってあなたに夢中なのです。

(な、なーんちゃって!!)

初恋にトキメク中学生のようなこっぱずかしいポエムがすらすら浮かんでしまった自分自身に照れてしまう。

「よしっ!!」

浮かれた空気を吹き飛ばすようにひとりきりの室内で拳を振り上げ、自分自身に喝を入れる。

(仕事するぞー!!)

やる気スイッチが入ってしまった私はそれから一週間、お披露目会の準備に全力投球するのだった。