「少しくらいぃ!!聞いてくださいよぉ!!」

このニコチン中毒者!!ちょっとくらい話を聞いてくれたっていいじゃないですか!!

シャツをぐいぐい引っ張り、咳き込みながら訴える。

「なんですか?」

シャツが伸びきって使い物にならなくなるのを恐れたのか、王子さんは渋々尋ねてくれた。

灰皿に煙草の柄をトントンとついて灰を落とすと、もう一度口元に指先が当てられる。

どうでもいいけど、煙草を吸う男の人ってえもいわれぬ色気がある。

っていうか、王子さんは煙草が似合いすぎだ。これでは若王子ではなく悪王子だ、悪王子。

「“ルージュランチ”のことなんですが……」

「どうかしましたか?」

「初めてなので勝手が分からないので……当分免除して頂けないでしょうか」

「却下です」

「ええ!?」

却下を言い渡されるまで数秒どころか、コンマ一ミリもなかった。これでは昨日一生懸命考えた台詞達の使いどころがないではないか。