**********

最強の味方は最強の敵にもなりうるということを、今日一日で嫌というほど学んだ。

「うわあ、ひばりちゃんのお姉さん“ルリアン”の社長秘書なのねー!!一部上場の超一流女性下着メーカーじゃない!!私も愛用しているわー」

ゆりあさんは顧客登録カードの情報をパソコンに打ち込みながら感心したように言った。

先ほどのやり取りで魂が抜け呆けていた私は、自席ですっかりうな垂れていた。

「そうなんです……。昔から姉は私と違って大変優秀でして……」

優秀だからこそ愚鈍な妹を持って歯痒い思いをしていたのかもしれない。

夏休みの宿題、高校受験も、就職活動だって、呆れず面倒を見てくれたのはひとえにつぐみ姉の辛抱強い人柄のなせる業である。

(どうしよう……)

まさか、こういった強硬手段に出てくるとは夢にも思わなかった。

「ということでしばらく手伝ってね。麻帆さんには許可を取ったから」

ゆりあさんは天使のように美しい顔で微笑むと、早速当日までの段取りを説明し始めた。

私の本来の担当は野外イベントである。ブライダルなんて華やかな舞台にはそうそう縁がないはずだが、依頼人の希望もあり、今回に限りゆりあさんのアシスタントとして、お披露目会に携わることに決定と相成った。