ランチタイムの王子様!


実は仕事が終わってアパートに帰ってから、自炊するようになったのだ。

ただし、品数が作れるほど手際が良くないから、サラダだけ、汁物だけとか作るものを限定して、あとはキッチンすみれのお惣菜に頼っているわけだけれど。

これは私にとっては大きな進歩だ。

「王子さんに買ってもらった包丁のおかげです。あの包丁で作ると何でも美味しく作れるような気がするんですよ」

持ち手は私の小さな手にも馴染んで使いやすいし、野菜でもお肉でも思った通りに良く切れる。

……なにより、王子さんが隣にいるように感じられて、落ち着いてキッチンに立てるのだ。

「……それは良かったです」

「王子さん?」

しばしの沈黙の後、王子さんは急によそよそしくなって私から距離を置くように洗いものを始めた。

横顔から察するに、これは……。もしかして、もしかすると?

「照れてます?」

「いいから、早く切ってしまってください」

うわあ、可愛いっ!!

年上の男性を可愛いと思うのは奇妙かもしれないが、可愛いものは可愛い。

子供のように口が悪くなるのは照れ隠しだろう。僅かに赤らんでいる頬を見ていると胸がきゅんとときめいた。

(王子さんでも照れることあるんだ……)

不意打ちのように可愛らしいところを見せられたら、私の心臓などひとたまりもない。

あーどうしよう。ドキドキして集中できないかも。