「本当に、ひばりちゃんみたいな娘が欲しかったわ~。息子なんて歳を食ったら生意気で可愛くないものよ。早く孫の顔でも見せてくれればいいのに……」

菫さんはお惣菜をパックに詰めながら、この場にいない私の先輩兼自身の息子である王子さんの愚痴を零していく。

未婚の息子の行く末を心配する母親ってみんなこんな感じなのかしら?

「最近は30代でも結婚していない人は大勢いますよ?」

「違う、違う。あの子は結婚しないんじゃなくて、出来ないタイプよ。愛想もないし、あれじゃ女の子が怖がって逃げちゃうわよ!!」

間違いないと自信満々に言うから、私まで笑い出しそうになってしまう。

確かに眉間に刻まれた皺を伸ばさない限り、王子さんに女性が寄ってくることはないだろう。

……まあ、私は慣れてきたから平気だけどね。

「ひばりちゃんは?結婚の予定はあるの?」

「ないですよー。もらってくれる相手がいませんもん」

残念なことに浮いた話は未だになし。

男性の王子さんより劣る女子力でどうやって結婚相手を探せと……。

「でも、両親も孫の顔は近々見られるんじゃないですかね。姉がもうすぐ結婚するんですよ」

「あら、おめでたいわねえ」

王子さんはひとりっ子だから、菫さんからの期待も相当あるとお見受けする。

次女というお気楽な立場で良かったと私はしみじみと思うのだった。