「あっ!そうだ……」
リビングのドアに手をかけた香山先生はそう言って俺の方を見た。
「私がここに来た時にマンションのエントランスに生徒がいましたよ」
「生徒が?」
「望月先生のクラスの桜井さん」
「えっ?」
香山先生の口から出た彼女の名前。
それを聞いて俺の胸はドキンと高鳴っていた。
「望月先生のお見舞いに行こうと思ったのかしらねぇ?」
香山先生はそう言ってクスクス笑う。
「でも何で彼女はこのマンションに望月先生が住んでるってわかったのかしら?不思議ですよね」
香山先生は俺の方を見て再びクスクス笑う。
冷たい笑顔。
目の奥は笑っていない。



