「香山先生、もう大丈夫ですから……」
俺はキッチンにいる香山先生に声をかける。
でも香山先生は俺の声が聞こえてないのか、ワザと無視してるのか無言で料理を作り始めていた。
「旦那さん、待ってるんじゃないんですか?」
もう一度、声をかける。
香山先生は既婚者だ。
左手に結婚指輪はしてないけど、前に既婚者だと言っていた。
「旦那の事はほっといても大丈夫なんで」
俺の声、聞こえてんじゃん。
「そういうわけにもいかないでしょ……」
「うちね、夫婦関係破綻してるんですよ」
「はっ?」
そう言った香山先生の顔は少し寂しそうで……。
でもすぐに笑顔になった。



