「こんなところで何してるの?」
「えっと……その……」
何で?何で香山先生がいるの?
私の前に立っていたのは香山先生だった。
片手にはカバン、もう片方の手には食材がギッシリ詰まったスーパーの袋。
私は自分が持っていたコンビニの袋をサッと後ろに隠した。
「桜井さんって、このマンションの住人?」
「…………いえ」
「じゃあ、何でここにいるの?」
先生のお見舞いに来たけど、オートロックで中に入れなかったとバカ正直に話すわけにもいかず……。
「香山先生は?このマンションに住んでるんですか?」
「私?いいえ」
そう言った香山先生は少しだけ笑ったように見えた。
「望月先生に用があって来ただけよ」
「そ、そうなんですか」
先生の彼女って、まさか香山先生?
胸がチクチク痛い。
早くその場から消えたくて、私は香山先生に会釈すると足早にマンションを後にした。