「ゆずはさぁ……」
綾乃はそこまで言ってベンチから立ち上がると、屋上テラスのフェンスにもたれかかった。
「先生のこと、好きでしょ?」
「えっ?」
「図星だな」
綾乃に先生が好きだなんて言ったことなかったのに……。
「ゆずの態度を見てたらわかるよ。先生、カッコイイもんねー。人気もあるし」
綾乃はそう言ってクスッと笑った。
まさか、綾乃も先生が好きなのかなぁ?
そう思ったら、胸が少しだけズキンと痛んだ。
「綾乃はさぁ……」
「ん?」
「いや、何でもない」
綾乃が先生が好きかどうか確かめたかった。
でもそれを聞く勇気がなかった。



