屋上テラスはテーブルやイス、ベンチが置いてあって、昼休みにお弁当を食べるために利用する生徒が多い。
私も綾乃と一緒に何回か利用したことがあった。
夕方の屋上テラスは昼間と違って、少し肌寒い。
私と綾乃はベンチに並んで座った。
「体調が悪いって嘘だよねぇ?」
ベンチに座って下を向き、黙り込んだ私に綾乃はそう言ってきた。
「う、嘘じゃないよ?」
本当は体調なんて悪くなかった。
「先生がいなくて心配で、ピアノなんて弾ける気にもなれない」
「えっ?」
私は綾乃の顔を見た。
「違う?」
綾乃はそう言ってクスッと笑う。
綾乃の言う通りだった。
ピアノなんて弾ける気にもなれなかった。



