今日1日、授業も何もかもが頭に入ってこなくて、ずっと上の空だった。
それは先生が心配だったから。
放課後、ピアノの練習でピアノ室に行こうと思ったけどキャンセルした。
香山先生には体調不良だと嘘をついて。
「ゆず?今日もピアノ室に行くの?」
帰る用意をして教室を出た時、綾乃にそう聞かれた。
「あ、えっと、今日は帰るね」
「そうなの?ゆずがピアノ室に行かないなんて珍しいね」
「体調が良くなくて……」
私の言葉に綾乃は私の手を握り、歩き出した。
「ちょと、綾乃?」
私が名前を呼んでも返事しない綾乃。
私の手を引いたまま階段を上がっていく。
屋上テラスに出た時、綾乃が私の手を離した。



